私の心は全て知っている。
「僕ごめんなさいするね」
男の子は急に私にそう言った。
「滑り台を反対から登ってごめんなさい」
どうやら他の先生に怒られたようだ。
「うん良いよ。次から気をつけてね!」
男の子は無言だったが、
心の中で「よしっ!」
と、言っているように見えた。
そしてその後男の子は、
怒った先生の元へ謝りに行った。
他の子と遊んでいると、
また私の元へやってきてこう言った。
「ダメだ。僕、謝りきれない」
謝りきれないってなんだろう?って思った。
男の子は続けてこう言った。
「謝ったら3回怒られた・・・」
私はとっさにこうアドバイスした。
「だったら3回謝ったら良いよ」
その男の子は「ハッ!」とした顔をし、
また先生の元へ行った。
今度は一部始終を観察する。
男の子が3回謝る。
先生が注意する。
男の子がもう一度謝る。
先生がまた注意する。
それを何度か繰り返したのち、
男の子は諦めて先生から離れていった。
男の子の心には、
「どんなに謝っても許してもらえなかった」
と言う傷跡を残してしまった。
その先生はなぜ許してくれなかったのだろうか?
その答えは私にはわからない。
わからないけど、
一つだけ後悔したことがある。
当時私は、
男の子を助けることなく、
ただの傍観者になっていた。
あの時私は、
男の子のことを見捨ててしまった。
それは誰も見ていないし、
事情を知らないかもしれないけど、
私の心は全て知っているんだ。
もしも過去に戻れるとしたら、
迷わず今度は助ける。
もし同じような機会に遭遇したら、
迷わず助ける。
そう心に決めて、
私は今日も歩んでいく。